コピーライターは人の心理に働きかけて、行動を促すコピーを書かなくてはなりません。
今回は人間心理に訴えかける具体的な手法のカリギュラ効果、ザイガニック効果、カクテルパーティー効果について説明します。
コピーだけでなく、接客や人間関係、さらには恋愛にも役立つ内容となっていますので、最後まで読んでください。
コピーライターが知っておくべきカリギュラ効果とは?
カリギュラ効果は別名カリギュラ現象とも呼ばれます。
禁止されるほどやってみたくなる心理現象のことです。
「自分の行動は自分で決定したい」
「人からの指示ではなくて、自分の意志によって自由に行動したい」
そのような思いを人は誰でも、多かれ少なかれ持っているものです。
これを禁止されるとストレスを感じてしまいます。
その禁止によるストレスを解消するため、むしろ逆に禁を破りたくなってしまうのが人間です。
例えば「男子はここから先へ入っちゃダメ」と言われると、男はかえって入りたくなってしまいます。
この効果は、広告宣伝やテレビ番組でも広く利用されている手法です。
例えばテレビ番組で「ピー」などの効果音を付けて発言を聞こえなくしたり、モザイク処理をかけて映像の一部を見えなくします。
これは『カリギュラ効果』によって、視聴者をより惹きつける効果を狙っているのです。
『カリギュラ効果』の名は1980年に制作された、アメリカとイタリアの合作映画に由来します。
主人公であるカリグラの異常な性欲と残忍性を描いた映画です。
「映像があまりにも残忍すぎる」と問題になり、一部地域では上映禁止になりました。
ところが禁止されるとかえって人々の興味を誘い、映画は大ヒット。
ついには上映禁止を解除せざるを得なくなったのです。
この映画の題名が日本では『カリギュラ』。
名前をそのまま使用して『カリギュラ効果』と呼ばれるようになったのです。
しかし、この手法はかなり古くから、日本の物語にも書かれています。
例えば『鶴の恩返し』では、ハタを織っているところは「決して覗かないでください」と言われますが、気になって覗いてしまいます。
正体がばれ、鶴は大空へ飛んで行ってしまうのです。
浦島太郎も乙姫様から「決して開けないでください」と玉手箱を渡されますが、禁を破って開けてしまいました。
このように古くから伝えられていますが、映画のカリギュラでその効果が改めて認識されたと言うことです。
「あなただけに、そっと教えます。だから他の人には絶対に言わないでください」
これも、カリギュラの一つと言えます。
「髪に悩みがない人は、ここから先は絶対に読まないでください」
このような表現で興味をひくことが大事です。
コピーライターが知っておくべきザイガニック効果とは?
このザイガニック効果は別名ツァイガルニク効果とも言います。
『完成されたものより、未完成のものが人の印象に残りやすい』という心理現象です。
心理学者『ブルーマ・ツァイガルニク』によって提唱されました。
彼はこの効果を提唱するまでに多くの人々による実証実験を試みています。
そして結論づけたのです。
「人は欲求によって行動し、そのプロセスでは緊張するが、完了すると緊張がゆるみ、緩んだことによって記憶が薄れてしまう」
別な言い方をすると、課題を完了しようと目標に向かって動いていたのに、強制的に終了させられると強く記憶に残ると言うこと。
つまり、未完で終わったことに対して人は強くこだわってしまうと言うことです。
もっと簡単に言えば「途中で終わってしまって、なんかモヤモヤするなあ、気になるなあ」というやつです。
ドラマや漫画でよく見られます。
・ライバルが登場したとき
・主人公がピンチに陥ったとき
このようなタイミングで『つづく』だと、次回が気になって仕方ありませんね。
また、映画やドラマの予告編もこの効果を狙って成果を上げています。
予告編なんて断片的で、何が何だか内容なんてちっともわかりません。
だが、その途切れ途切れの断片が、気になって仕方ないのが人の心理。
多くの人が叶わなかった恋を長く記憶しているのも、ザイガニック効果によるものです。
別れを告げた者より、告げられた方が後を引いてしまうのも同じ理由によります。
このような心理効果を巧みに利用するのが広告です。
「私はヨガで7㎏ヤセました」と書けば「ああ、ヨガでヤセたのね」で終わりますが「私はコレで7㎏ヤセました」と見出しに付けられると「コレってなんだろう?」と気になりついつい記事を読んでしまいます。
「〇〇で7㎏ヤセた」でも同じ。
「〇〇は何だろう」と気になってしまうのです。
ブログで「これには三つの理由があります」と書いて、その内容を書かなければ気になって「三つとは何?」と、どんどん先に読み進めてくれます。
メルマガでも多く使われる手法です。
「これについては、次号で詳しく説明します」
このように書くと次号が気になって、次も読んでくれる人が増えるのです。
付き合いだして間もない、大好きな異性から夜中の12時に電話がありました。
「ちょっと、あの~、どうしても話したいことがあって。でもやっぱり電話じゃ話せない。今度会った時に話す」と言って切られてしまったら、次の約束の1週間後まであなたは待てますか?
コピーライターが知っておくべきカクテルパーティー効果とは
カクテルパーティー効果は、どんな騒音の中にいても自分に関連や関係のある情報は、無意識にその内容が目や耳を通して入ってくるという現象です。
カクテルパーティー効果はとても有名な行動心理の一つで、1953年イギリスの心理学者『エドワード・コリン・チェリー』によって提唱されました。
多くの人が経験している現象としては、電車で居眠りしていても「次は〇〇駅です」と自分の下車する駅名をアナウンスされると、不思議と目が覚めます。
これが、カクテルパーティー効果です。
あなたも一度くらいは経験があるのではないでしょうか。
これは人間関係において、無視できない効果があります。
次のような実験を基にカクテルパーティー効果は証明されているのです。
A)何も意識せずに会話する
B)意識的に相手の名前を複数回言いながら会話する
この二つのパターンでそれぞれ15分ずつ会話をしてもらう実験をしました。
相手の名前を呼びながら会話した方が、かなり印象に残ることが裏付けられています。
美容師のあなたなら当然心得ていると思いますが、この効果を利用してお客様との距離を縮め、さらに親しくなりましょう。
では、文章ではどのように利用すると効果的か。
「不特定多数にあてたメッセージ」ではなく「あなた」一人にあてたメッセージの方がより強く相手に伝わると言うことです。
「皆さんにこのことを伝えたかった」ではなく「あなたにどうしても、これを伝えたかった」の方がより伝わりやすいのは、きっとあなたにもお分かり頂けたと思います。
したがって「スーツを格好良く着こなしたいサラリーマンへ」よりは「スーツを格好良く着こなしたい30代のあなたへ」の方がより強く伝わるのです。
「最近太ったなア、と思っているあなたへ」より「最近太ったなア、と思っている20代のあなたへ」の方が効果的なのは言うまでもありません。
まとめ
今回は『カリギュラ効果』『ザイガニック効果』『カクテルパーティー効果』の三つを紹介しましたが、まだまだ人の心理に訴える文章術はたくさんあります。
この続きは次回で。