『おたる潮まつり』と切っても切れないのが『潮太鼓』だ。
『潮太鼓』には昭和42年(1967年)第1回 『おたる潮まつり』開催を機に結成された歴史がある。
潮太鼓はおたる潮まつりで躍動する!涙を誘う男たちの望郷とは?
おたる潮まつりにおける潮ねりこみが祭の華なら、潮太鼓は怒涛だ。
海への感謝がテーマである『おたる潮まつり』は、あらゆるものが海をイメージしている。
潮音頭には波、港、岬、潮など海に関連した歌詞が頻繁に出てきて、振り付けも波を表現している。
もう一つ、潮まつりに欠かすことのできない歌が『潮踊り唄』、こちらも海から始まっている。
また、ポスターなどに描かれる、祭りのシンボルマークもOTARUのOの中に波をイメージしながら、日本伝統の模様である巴二つを組み合わせている。
それらの中で最も大胆に海を表現するのが潮太鼓だろう。
生命の源、海は偉大だ。
偉大で広大なる海を浄化するには波が欠かせない。
逆巻き、猛々しい怒涛こそが海の清浄を保ち生命を育んでいるのだ。
潮太鼓ははるかに迫り来る、日本海の怒涛を見事に音で再現する。
ドーン、ドーンと静かに立ち上がる波は次第に強く雄々しく、地響きのように押し寄せ、やがて天も裂けよとばかりに轟きわたる。
人はそれを心で聞いて、全身に受け止める。
僅かな時間ではあるが、聞きほれている間は邪念さえ吹き飛ばしてくれる。
怒涛が海を洗うように潮太鼓は、心を洗い流すのだ。
潮太鼓は石川県をルーツとしている。
明治から大正にかけてのニシン漁全盛期には北陸から北前船に乗って、小樽の忍路や祝津のニシン場に出稼ぎで来たヤン衆たちが大勢いた。
彼らが忘れ難き故郷をしのんで打っていた太鼓こそが、潮太鼓の発祥だと伝えられている。
時には目頭を熱くしながら、ヤン衆は太鼓に心をぶつけたのだろう。
潮太鼓との出会いは竜宮神社
戦後から復興し、小樽の祭りにも本格的な太鼓隊が欲しいと考えていた、商工会議所の関係者がある晩訪れた竜宮神社で、リズミカルで迫力に満ちた響を聞いた。
ねじり鉢巻きの男三人がほろ酔い機嫌で、気持ちよさそうに太鼓を打っているではないか。
太鼓の音は関係者の足先から、脳天までを貫いた。
聞けば彼らの出身地である石川県の漁村に、古くから伝わる太鼓の打ち方なのだと言う。
小樽の祭りで太鼓をと考えていた商工会議所の関係者は、小躍りするほどの喜びようであった。
3人は小樽の若人に教えることを快諾してくれたのだった。
この時の小さな芽吹きが潮太鼓となって花開いたのです。
昭和42年の第一回『おたる潮まつり』を機に潮太鼓保存会が結成され、今や小樽には欠かすことのできない存在となっている。
潮太鼓は3部構成
18歳以上の親潮隊、中高生のハマナス隊、小学生以下の若潮隊と3部で構成する。
潮太鼓保存会は女性メンバーが多いのも特長の一つだ。
黒髪を後ろにキリリと束ね、鉢巻き法被姿は凛々しく、太鼓を打つバチさばきは男顔負けの力強さで迫ってくる。
太鼓美人の凛々しさに思わず見とれてしまう人も多いのです。
『黒髪の 束ねて祭りの 太鼓打つ』
潮太鼓の演目は次のように区別されている
潮太鼓の演目は次のようなイメージでこうせいされている。
◎親潮隊、ハマナス隊による、小樽海岸に打ち寄せる日本海の荒波をイメージし、それを大太鼓、小太鼓で表現する潮太鼓。
◎次々と岸に寄せ来る幾重もの波、樽を打ってそれを表現した若潮太鼓。 ◎山から海に向かって吹き下ろす風を表現した、揃え打ちの曲山背。 ◎お祝い事のために創作された、踊り・歌・横笛・太鼓に合わせて餅をまく、餅つき囃子。 ◎鬼のお面に奇抜な衣装を纏い、アドリブを演じながら太鼓を打つ。 |
北海道内で最大級と言われる、直径4尺のスーパー大太鼓の打演は実に勇壮で見ごたえがある。
日本海の荒波とそれに立ち向かう漁火をイメージし、大太鼓に向かい二人が大バチ、小バチで交互に打ち合うリズムと響きの心地よさ。
潮太鼓は北海道の悠久なる大自然とそこに生きる人々のたくましさに加え、遥かなる男たちの望郷と開拓の精神をも宿している。
太鼓は3日間を通じて登場し、潮まつりを大いに盛り上げてくれるのだ。
おたる潮まつりで例年、潮太鼓が打演される時間帯
◎初日
18:00~19:00 潮ふれこみ(都会館前出発のパレード)
◎2日目
21:40~22:00 潮太鼓 打演
◎3日目
12:10~13:00 潮太鼓 打演
20:40~20:50 潮太鼓 打演
21:40~22:00 潮太鼓 打演
日本の伝統美を迫力満点で伝える潮太鼓は、お祭以外でも引っ張りだこのようです。
市内の老人施設の慰問、各種イベント、各地域の記念行事と出演依頼は引きも切らない。
特に人気なのが、ダイヤモンドプリンセスなど豪華客船の歓送迎式典。
岸壁でその見事なバチさばきを披露するのですが、特に出港するときの送り太鼓は感動を与えるようだ。
船上から身を乗り出して大きく振ったその手で、目頭を押さえる外国人観光客もいるほどなのだと言う。
また時には小樽を離れ、他市町村のお祭りやイベントからの参加要請にも応え、大忙しなのだ。
『小樽潮太鼓保存会』は、おたる潮まつりと北陸の合作による素晴らしい小樽の財産なのです。