詩と幻想にあなたは酔う小樽・雪あかりの路は静かなる童話の世界

出来事

小樽の2月は雪深く凍れる。

白銀に染まる冬の厳しさこそ小樽の特徴、北国の魅力。

 

運河の夜、雪が静かに降り注ぐガス灯はエキゾチックでさえある。

この魅力を全国に発信しようと試行錯誤を重ね、1999年(平成11年)に始まったのが小樽 雪あかりの路』だ。

 

雪や氷で造形した灯篭、ぼんぼり、キャンドル、ランプなどにろうそくの灯をともして、炎と雪と氷の競演を楽しむ祭りであり、演出に電気照明は一切使用されない。

雪あかりの路は塩谷出身、伊藤整の詩集に由来する

イベント名ともなっている詩集『雪明りの路』の著者・伊藤整が幼少期を過ごした塩谷地区では毎年、市内各地の先陣を切って前夜祭が執り行われ、ゴロダの丘にろうそくが灯される。

 

整の記念碑の前に集合した塩谷小学校の在校生、OB、地域の人々によって校歌が斉唱され、暮れゆく塩谷の海と空に歌声は冴え冴えと響き渡った。

 

セレモニーのあと、子どもたちにはおやつが配られ、桃内・塩谷地区の人々が心を込めた温かい甘酒も振舞われたが、コップを手にした一人の観光客は印象的なほど感激しきりだった。

 

海と森に囲まれた塩谷会場は9日夜もろうそくの灯は揺れるが、この素晴らしい景観での開催が2日間だけとは寂しく、如何にも惜しい。

 

 

生まれて間もなく両親と共に塩谷に越してきた伊藤整は、子ども時代を当時の塩谷村伍助沢で過ごしている。

 

整は塩谷で育った偉人であるから、その功績をたたえて立派な文学碑が市の有志によって、国道5号線沿いの日本海を見下ろす丘に建立された。

 

この文学碑があるゴロダの丘が塩谷雪あかりの路会場となり、過疎化が著しい塩谷もお祭りの夜は、ほのぼのと明りに抱かれる。

 

丘の斜面には幾本もの雪道が拓かれ、数々の手作りランプの柔らかな灯が雪と木々と闇に映え渡るのだ。

 

幻想的なろうそくの灯が浮かぶ静寂の丘には時折り波音が聞こえて、文学碑に刻まれた伊藤整の詩そのままだ

 

『海の捨児』

私は浪の音を守唄にして眠る

騒がしく絶間なく

繰り返して語る灰色の年老いた浪

 

私は涙も涸れた凄愴なその物語りを

つぎつぎに聞かされていて眠ってしまふ

 

私は白く崩れる浪の穂を越えて

漂っている捨児だ

 

私の眺める空には

赤い夕映雲が流れてゆき

そのあとへ星くづが一面に撒きちらされる

 

ああこの美しい空の下で

海は私を揺り上げ揺り下げて

休むときもない

作:伊藤整

塩谷はスゴかった?朝ドラ『旅路』流行歌『小樽のひとよ』世界的才媛・坂西志保生誕!

《白樺をバックに妖しく燃える宙につるされたランプ》

昨年12月にはセブンイレブンが撤退して、買い物さえままならない塩谷地区であるが、かつては度々世間の注目を浴びている。

 

『塩谷 雪あかりの路』会場から1kmほど坂を登った、伍助沢入口にJR塩谷駅がある。

無人駅となって久しいが、かつてはドラマの撮影が行われたこともあり、JR北海道と小樽の歴史に1ページを刻んでいる。

 

NHKの朝ドラ第7作『旅路』の撮影がこの駅を舞台に行われたのだ。

鉄道員をモデルにした平岩弓枝の同名小説を本人の脚色によって、昭和42年4月から翌年3月まで放送された。

 

平均視聴率45.8%で最高が56.9%と言うから驚く。

今や伝説となった、あの『おしん』に次いで朝ドラ史上、歴代2位なのだという。

 

地元の農家の人によると、今でも細々と生産されている『旅路ぶどう』のブランド名はこのドラマに由来するとのこと。

 

そして、『旅路』と同じく昭和42年、東京ロマンチカが歌った『小樽のひとよ』が大ヒットしました。

 

『🎵二人で歩いた 塩谷の浜辺・・・・・・・』

この歌詞は、ホッケ浜から文庫歌(ブンガタ)浜をイメージしたものだろうと思われる。

 

東京ロマンチカのデビュー曲にして、何とシングルレコード150万枚以上を売る大ヒットなった。

レコードジャケットのスケッチは小樽在住の画家、故・藤森茂男氏が制作した。

 

塩谷は伊藤整の他にも偉人を輩出している。

日本が世界に誇る才媛坂西志保、その人である。

 

明治39年、伍助沢の開拓農家に生まれ、若干10代半ばで単身上京。

その後、20代でアメリカへ留学し、帰国後JHQ職員、外務省の嘱託、NHKの論説委員等を務めた日本を代表するアメリカ通の女性だ。

 

決して裕福とは言い難い開拓農家の子女が、大正時代に10代で単身上京。

その後、アメリカへ私費で留学するのであるから、時代を考えるとその凄さが分かろうと言うもの。

 

何という向学心、岩をも貫く意志の強さ、驚くべき行動力、そして勇気。

もう、この女史には敬服するしかない。

 

『雪あかりの路』は炎と氷の協奏曲

 

 

それにしたって、物と物との組み合わせや異物同士の化学反応とは不思議なものだ。

氷と火は性質が全く違っていて、交わるところなどあり得ないと思っていたが「雪あかりの路」を見て、まるで考えが変わってしまった。

 

氷に包まれた火の、なんと柔らかいことだろう。

炎を抱く氷のなんと言う温もりだろう。

 

そして両者の醸し出す静けさに圧倒される。

氷と炎が互いに語り合い、声もなくにこやかに笑い合っているような優しさが、見る者の心を温かくする。

 

冷たさに囲まれながら火は消えない、炎に焼かれながら溶けることのない氷の不思議さ。

まさに北海道の冬が作り出す、コラボレーションの極致と音のない協奏曲だ。

 

氷や雪がこんなにも暖かなものだとは知らなかった。

ろうそくの火が、これほどしなやかだとは知らなかった。

『小樽 雪あかりの路』期間中に市内各会場で氷と雪の器に灯されるろうそくの総数は、12万本に及ぶのだと言う。

小樽 雪あかりの路・運河のきらめき旧手宮線の静寂

メイーン会場は小樽運河と旧手宮線の二か所なのだが、これがまた両者対照的な趣で人々を楽しませてくれる。

 

遊歩道のモニュメントやランプからこぼれる灯が水面に映えて、運河は青く華やかにきらめく

大勢の人が中央橋や浅草橋から身を乗り出してカメラを構える表情は真剣そのもの。

 

中央橋広場には大きな雪のモニュメントが築かれ、幾つもの明かりが彫刻『笛を吹く少年』とその妹の顔を暖かに照らす出す。

真冬のランニングシャツが少年の一途さを一層際立たせてくれる。

 

いつもなら午後7時を回ると人影もまばらな寒々とした運河の夜だが、祭りの期間中は夜半まできらめきの中にシャッター音と人々のざわめきが絶えない。

運河がきらめきなら、手宮線の雪あかりの路は静寂だ

闇の中に暖かく穏やかに灯った明かりの周囲を静寂が包み込み、雪上の足音だけがキュッキュッと聞こえている。

 

人々は環境に敏感だ。

きらめきの運河なら、誰も遠慮することなく、

「キレイ!」

「スゴイ、素敵」

 

と声をあげて感嘆し、語り合うのだが手宮線会場の静けさの中では、たとえ熱々のカップルでも数人のグループであっても、誰も大きな声で話すものはいない。

 

雪とろうそくの見事なコラボレーションを、声を殺して称えるのだった。

時折静寂を破るのは、道行く見物客に焼いた餅を配っている地元の有志の人々の声だ。

 

「餅たべなさい、温まるよ」

「焼きたてだから美味しいよ、遠慮はいらないから」

 

バーベキュー用の焼き台に炭をおこして焼くから、この餅はとても美味しい

如何にろうそくの灯が暖かに見えるとは言っても、小樽の2月は寒く夜ともなれば氷点下5度6度は当たり前。

 

ボランティアの人たちが、一所懸命焼いてくれた餅は体の芯まで温めてくれる。

炭火だから全体がふっくらとしていて、とても柔らかく焼き上がるから、口の中にフワーッと暖かさとソフトな感覚が広がっていく。

 

出来れば、甘酒が欲しいなあア・・・・・。

甘酒は近くで売っていたようだが、今回は見つからなかった。

 

こんな人たちがいるからお祭は10日間も飽きられることなく続き、50万人をこえる観光客が訪れるのだろう。

 

ありがとう皆さん。

外国人の観光客も、みんな笑顔で頬ばっていた。

なお、メイン会場でろうそくの灯が灯されるのは開催中の午後5時から午後9時まで。

『小樽 雪あかりの路』は全市、全市民挙げての手づくりのお祭だ。

会場は市内全域に及ぶ。

 

銭函、築港から忍路、蘭島までの地域ごとはもちろんのこと、市役所から各商店街、企業、警察署、消防署、学校、美容室などなど、あらゆるところで雪とろうそくのささやき合いが、人々の心に希望の灯をともしてくれる。

 

銭函駅では駅構内と線路際に明かりがともり、乗客の目を奪う。

教会の前には大きなハート形のオブジェが造られ、幾多の明かりがほのぼのと夜を照らしている。

 

各地の公園に積もった雪を実に上手に利用して、ろうそくの素朴な明かりで見ごとな幻想の世界を作り出す。

朝里川温泉郷の雪あかりの路も感動ものだ。

朝里川の流れを縫って、岩の上に置かれたランプは新雪が積もるともう、まったく自然に溶け込んでしまう。

 

はるか昔からそこには灯がともっていたような神秘が、見る者の心を奪って離さない。

晴れた夜などは、しばらくその場を動きたくなるほどだ。

 

初めはみんな感嘆の声をあげるが、しばらくすると誰もが押し黙る。

言葉はいらない、声を発すると壊れそうな神秘と精緻をみんな知っているのだ。

 

 

速報!

天狗山で2月9日に予定されていたイベントは、当日午後発生したロープウェイのトラブルにより、すべて中止となりました。

 

小樽の夜景を見下ろす天狗山には、雪とろうそくと木による異次元空間への誘いがあった。

樹木の下に灯るランプが赤く、青く、そうして橙色に枯れ木を照らし出す。

 

ランプの灯が風に揺らめくと枯れ枝が揺れて、宙が揺れる。

街中よりも天狗山の闇は濃いから、光の揺らぎはとても不思議な空間を演出するのだ。

 

コースに置かれた氷と雪のランプでゲレンデは真っ赤に染まり、スキーヤーが幻想の世界を滑り降りて来る。

 

2020年、天狗山会場でのオープニングセレモニーは2月9日午後6時より執り行われる。

600発の花火が冬の夜空に麗々と打ち上げられ、松明を持つスキーヤーの滑走、天狗太鼓の打演などが披露され、こちらはスキー場に相応しい賑々しく華やかなセレモニーだ。

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