牝馬に続き牡馬も無敗の三冠馬誕生!
デアリングタクトとコントレイルの大活躍で、サラブレット生産の本場である日高地方が沸き立っている。
特に『デアリングタクト』は競馬を知らないあなたにも希望を与える、夢のようなサラブレットだ。
競り市場で800人の参加者から一度はそっぽを向かれどん底を味わった馬。
二度目にようやく1,200万円で引き取られたが、これは平均落札価格3,500万円の3分の1だった。
それが、気が付けばJRA史上初の無敗での牝馬三冠。
涙を誘うデアリングタクト・ドリームをどうぞ。
デアリングタクトの三冠は日高の希望だ!
デアリングタクトは夢だ、希望だ。
コロナに沈む人々の救世主だ。
いくら褒めたってほめ過ぎでないほど、この馬は偉大だ。
競馬を知らなかった、興味がなかったあなたでさえ、この馬の生い立ちを知るとその素晴らしい意味が分かるでしょう、きっと。
何といっても牝馬の三冠とはすごいことだ!
しかもデビュー以来無敗なのだから、想像を絶するものがある。
勿論、長いJRAの歴史を紐解いても初の快挙だ。
サラブレットは元々神経が繊細で、扱いには細心の注意が必要だと言われてきた。
牝馬は牡馬に比べさらに体調の管理が難しい。
三冠を争う3歳は人間でいえば思春期にあたるのだから、管理・調教の難しさは想像できるだろう。
その、史上初の栄冠に輝いた『デアリングタクト』の競り落とされた価格が1,200万円だったのだから、一層の驚きをもって競馬サークルをザワつかせていることだろう。
しかし驚くのは彼女ばかりではない。
母馬の名を『デアリングバード』という。
この馬はノーザンファームから長谷川牧場に388万円で引き取られたのだから、これまたびっくりではないか。
親仔の売買価格が合計で1,588万円とは破格の安さだ。
ちなみに近年のサラブレット競り市での平均落札価格が約3,500万円で、その前日に行われるセレクトセールのこれまでの最高値は6億3千万円。
セレクトセールでは毎年、2億円以上の値が付く馬が数頭も出る。
そして、デアリングタクトもう一つの夢物語は、長谷川牧場で生まれたことだ。
繁殖牝馬が8頭という、夫婦二人で経営の小さな牧場だ。
長谷川牧場の敷地面積が25ヘクタール。
そういわれてもピンときませんよね。
比較するとおおよその想像がつくでしょう。
サンデーサイレンスやその仔ディープインパクトで有名な、日本の競走馬界の大巨人『ノーザンファーム』の敷地面積が1,500ヘクタールで東京ドーム319個分もある。
ちなみにもう1頭の牡三冠馬コントレールが生まれた新冠にある、ノースヒルズが120ヘクタールだ。
これで中堅クラスと言えるでしょう。
長谷川牧場の小規模とノーザンファームの巨大ぶりが分かろうというものです。
繁殖牝馬も長谷川牧場8頭に対してノーザンファームは数百頭を誇る。
この圧倒的な規模に勝るノーザンファームに一矢どころか、何本もの矢を打ち込んで『参った』と言わせたのだから、デアリングタクトは素晴らしいのです。
デアリングタクトの夢を語るうえでもう一人欠かせないのが、岡田牧雄氏だ。
競り市でデアリングタクトを買い取ったのが、この岡田さんだった。
彼は馬の筋肉を見るのに長けている。
セリ市でデアリングタクトを何度も歩かせて、筋肉の強さに目を付けたのだという。
岡田氏は日高の最南端、襟裳岬のある、えりも町にサラブレットの育成牧場を有している。
風が日本一強いとされ日高地方にありながら、これまで牧場経営者には敬遠されていた地域だ。
この過酷な環境で、1歳になったばかりのサラブレットを昼夜20時間も放牧するのだという。
風の強い環境といい、放牧時間の長さといい、日本のサラブレット育成の常識を覆す手法だ。
何を隠そう、この私は若い時、静内の藤正牧場で働いたことがある。
あの、トウショウボーイ、スイープトウショウなどの名馬を輩出した名門牧場だ。
後継者がいないということで2,3年前に閉鎖されてしまったのが残念だ。
当時は夏が12時間ほど、日の短い冬は8~10時間ほどの放牧が常識だったと記憶している。
夜明けから夕暮れまで放牧地で過ごすのがサラブレットの日課だった。
それが夏冬たがわず、20時間の放牧とは破天荒ともいえる育成方法だ。
NHKのニュースで岡田氏は言っていました。
「熊や鹿、アライグマなどが出没する夜も、厳しい環境下に放って置くのですから馬は精神的に強くなります。
体に穴が開いた馬が結構いますよ。
鹿の角で突かれたのでしょう」
「デアリングタクトが精神的に強いと関係者から言われるのは、そのせいでしょうね」
冒頭で書いた『サラブレットは繊細なもの』を根底から覆す発想だ。
常識にとらわれると実態が見えにくくなるものです。
デアリングは大胆、タクトは戦略の意味を持ちます。
大胆な岡田さんの戦略が正しかったことを裏付けたのが、この馬だったことに不可思議な運命を感じます。
だが、人間は変わるのが嫌だから、新しいことに挑戦するのはできるだけ避けたいから常識を持ち出して旧態にしがみついてしまう。
今、ビジネス界で注目されている理論があります。
その業界に詳しいコンサルタントからコンサルを受けても、全く役に立たないと言われているのです。
何故かというと、業界を知っているがゆえに常識にとらわれ、本当に改善すべき提案ができないのだという。
これは稲森和夫さんも著書に書いています。
日本航空の破綻をV復活させたのは、自分が航空業界についてまったく知らなかったことが幸いしたと。
現場の従業員に対して
「これはどうしてこうなんですか?」
と聞く。
答えの多くは
「これについてはこの業界の常識です」
と返ってくる。
だが、第三者のの稲森さんの目には全く不必要に映る。
その常識をやめさせて、経費節減と効率化を図ったのだ。
ひと昔前は公務員が最も前例にこだわる常識重視派だった。
が、今は政治家だ。
しかも『革新』を掲げる野党が常識、前例の権化、、抱きつきお化けだからたまったものじゃありません。
学術会議の任命回避。
前例を踏襲しなければ学問の自由を阻害したことになるは、分かりずらい。
むしろ学者や野党政治家にとって既得権がいかに大事かを物語る論理だ。
税金でぬくぬくと既得権にしがみついていたい魂胆が透けて見える。
学問の自由を叫ぶのであれば、経済的理由で進学をあきらめたり、中退を余儀なくされる若者にその何分の一かでもエネルギーを割いて欲しいものだ。
菅首相の『総合的、俯瞰的』も分かりづらいけど、既得権打破を口にする学者と野党政治家の既得権死守姿勢は、分かりづらさ通り越してミットもありませんよ。
常識という頑丈、堅固な砦を突き破ってデアリングタクトを史上初の無敗三冠牝馬に育てた、岡田牧雄さんに再教育していただくことを薦めます。
野党の政治屋さんと学術会議の皆様には。
それにしても時代は変わった。
『末は博士か大臣か』なんて言葉、全くの死語。
若者に言うと
「は~あ????」
でしょうね。
むしろ
「先生と呼ばれるほどのバカじゃなし」
がよみがえるかも知れません。
話がそれました。
でも、見方次第では競馬だってビジネスのヒントになるのです。
デアリングタクトが人々に与えた希望は他にもあります。
彼女が誕生した長谷川牧場が、日高町門別にあることこそ大きな意義を持つのです。
ここで2019年のデータを見てみましょう。
・牧場数 日高地区:690、 胆振地区:36
・サラブレット生産数 日高地区:5,873頭、胆振地区:1,326頭
・G1勝利数 日高地区:4 胆振地区22
G1の勝利数を見れば一目瞭然の力関係です。
つまり、日高地区は家族経営などの小規模な牧場が多く、胆振地区はノーザンファーム系を中心に大資本が集中しいるのです。
牡3歳クラッシック3冠がかかるコントレイルも日高地区の新冠生まれです。
この2頭の歴史に残る快進撃が日高を勇気づけている。
牝馬三冠の最初のレース桜花賞。
長谷川牧場の奥さんは、4コーナーを回った時に『もしかしたら』と思ったのだという。
直線に入り先頭に立った時は、もう涙があふれ出てゴールした時にはデアリングタクトの姿は、すっかりかすんでしまっていた。