『鬼滅の刃』は主人公の竈門炭治郎も格好良いが、9人の炎柱の中でセンターを張る煉獄杏寿郎も負けずと格好いい男だ。
弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です。
責任を持って果たさなければならない使命なのです。
決して忘れることなきように。
杏寿郎の母、煉獄瑠火さんが幼き杏寿郎に言い聞かせた言葉です。
素晴らしい言葉です、泣けてきます。
他人をいじめるなんて発想が、これぽっちも心にない人の言葉です。
杏寿郎はこの母の言葉を生涯忘れることなく胸に深く刻み込み、悪辣な鬼どもと戦い続けました。
母を心から慕い、尊敬し、母の言葉に忠実に生きた男。
そんな煉獄杏寿郎に焦点を当ててみました。
男の中の男・煉獄杏寿郎の強さと哀感に見る本物!
煉獄杏寿郎は5月10日生まれの20歳。
東京府荏原郡駒澤村の出身ですから、現在の世田谷区桜新町あたりですね。
ちなみに竈門炭治郎は15歳で、出身地は東京府奥多摩郡の雲取山です。
現在も西多摩郡の雲取山として、山名はそのまま残っています。
杏寿郎は若干20歳でありながら、次々と大人顔負けの名言を並べてくれるのだからすごいですね!
ただ、彼の家族は少しばかり複雑だ。
最愛の母を幼いころに亡くしています。
そして、葛藤にも似た思いを抱く父親。
たった一人の弟には、いつも優しい気配りを忘れない男。
それが、ある限りの命をすべて燃やして生きた男、煉獄杏寿郎です。
もう一度書きます。
杏寿郎の母、瑠火が言った胸に突き刺さる言葉を。
お母さんは幼い杏寿郎を抱き寄せて、こう言い聞かせたのです。
素晴らしいですね。
なんだかとても懐かしくていつか、どこかで聞いたことがあるような言葉です。
胸を痛いほどズッキンと、突き刺します。
助けられなければ、せめて弱い人をいじめるのだけは絶対にしてはならない。
どこかへ置き忘れたものを思い出させてくれる、ドキッとする言葉でもあります。
幼い杏寿郎に含めるようにこの言葉を言い聞かせた直後、母は言います。
「私はもう長く生きられません」
「強く優しい子の母になれて幸せでした」
幼い杏寿郎を抱き寄せる姿がとても印象的だった。
病弱だったのでしょうか。
だが、やさしさと強さに満ちた心豊かな女性でした。
お母さんの名は煉獄瑠火(るひ)と言います。
瑠璃を想像させる名前です。
瑠璃の色は紫を帯びた濃い青です。
作者は冷静さと炎のような燃える内面を名に表したのでしょうか。
優しく冷静な強さを秘め、幼い二人の子どもを育てることに命を燃やした、彼女の短い生涯を象徴する名前ですね。
鬼との戦いに明け暮れる杏寿郎でありますが、時にはいい歳のじじぃが思わずうなってしまうような名台詞を言ってのけます。

老いることも死ぬことも
人間という儚い生き物の美しさだ
この若者から、松尾芭蕉や鴨長明のような人生のわび錆を聞くとは思いませんでした。
芥川龍之介、三島由紀夫、川端康成のお三方にはこの言葉を聞いて、老いる美しさもあることを知っていただきたかった。
そして、まだまだたくさんの名作を書き遺してほしかった。
鬼滅の刃の作者は30代半ばの女性だという。
素晴らしい人生観と哲学の持ち主だと思います。
これからの、さらなる活躍が期待できそうですね。
『人間という儚い生きもの・・・・・』
このあたりの言葉は、父上の生きざまからの影響も大きいのではないでしょうか。
杏寿郎の父・煉獄槇寿郎は曲折の人生を送る人だ。
元々は炎柱であった父。
幼き杏寿郎と弟千寿郎に剣の指南と呼吸法を授けるが、厳しいながらも優しい人物だったようです。
特に才能豊かな杏寿郎の将来に対する期待は大きく、その指導には気合がこもっていました。
ところが、杏寿郎たちの母亡き後、炎柱を退きある日を境に酒に溺れる生活に堕ちるのだった。
二人の子どもにも何かと辛く当たる日常が続いた。
兄のような剣の才能がなかった千寿郎は、炎柱になることを早々にあきらめていた。
しかし、兄の杏寿郎が炎柱に就けば父が喜び、優しく強かった元の父に戻ってくれるかも知れないとひそかに期待していた。
だが、その願いも虚しかった。
杏寿郎の炎柱就任を聞いた父の言葉に千寿郎は落胆した。
「どうでもいい」
と吐き捨てたのだった。
悲しそうな弟に兄は言う。
「お前はきっと、立派な人間になる」
何という優しい気遣いのできる兄であろうか。
少年への慰めの言葉としては、これ以上のセリフはないだろう。
『鬼滅の刃』原作漫画を全巻読むなら
これから始まる鬼たちとの過酷な戦いを間近に控え、列車の座席にドカンと座り込み駅弁を頬ばる杏寿郎。
この豪胆さと落ち着きは仲間や部下にとって、この上なく心強い存在だろう。
鋼のようにしなやかで強き男、汝の名は煉獄杏寿郎。
しかし私は『人間という儚い生きもの・・・・・』彼のこの言葉が気になって仕方がないのだ。
強いばかりではない、どこかに少しの哀愁を感じさせてこそ本物の男だ。
若く美しい母の教えに従って、鬼との戦いに命をささげた男。
彼もまた、若くして母の元へ逝く運命にあるのだろうか?
だが、もしものことがあっても煉獄杏寿郎は若き闘士たちの英雄だ、希望だ、夢だ、光だ、憬れだ。
誰もが生涯、決して忘れないだろう。