『フランス人は服を10着しか持たない』
正直、この本の内容にはあまり興味はありませんが、タイトルがすごい!
日本では2015年に発売されて、累計65万部を売るベストセラーになっています。
この本のタイトルをあなたも、一度は聞いたことがあると思います。
オンラインビジネスでは欠かすことのできない、素晴らしい手法が隠されているのです。
フランス人と『10着しか持たない』の組み合わせが絶妙で、本の売り上げを伸ばす効果は絶大だったと思われます。
『10着』は嘘ではない、ぎりぎりの線を攻めている
最初からネタばらしをしておきましょう。
『フランス人は10着しか服を持たない』の10着はシーズンごとにトップス5着、ボトム5着でインナーなどは含まれません。
単純に言えば、日本の女性がお出かけ用と普段着を、シーズンごとに上下合わせて10着ずつ洋服を持っているということです。
タイトルから連想させる、今流行りの『断捨離』とは全く違った角度から書かれた本です。
シーズンごとに5着、10着といえば、特段感心するほど少なくはありません。
今の私は、1年を通じて10着もありません。
そもそも、クローゼットなどという立派な物もありません。
別に自慢できる話ではありませんが。
このタイトルの何がすごいかと言うと、フランス人と『10着しか』のギャップです。
日本人のみならず、世界中の人々がフランス人はおしゃれ、というイメージを持っています。
フランス人ならきっと男女問わずたくさんの洋服で、クローゼットがいっぱい、いっぱいだろうと想像します。
しかも、『10着しか』なんていわれた日にゃ、「えっ、すべてを合わせて10着だけ?」
と誰もが思ってしまうでしょう。
10着×4シーズン=40着
これ、多いのか少ないのかは、私には判断つきかねます。
あなたの感覚で判断してください。
おそらく、このタイトルに興味を惹かれて本を買った女性は多かったことでしょう。
先ほどのように単純計算すると上下合わせて40着ですから、これをそのままタイトルにしたのでは面白くも何ともありません。
『フランス人は年間通じて40着しか服を持たない』
これではだれも興味を示しません。
10着と40着では全く印象が違います。
でも、決して嘘を書いているとは言えませんね。
年間とか1シーズンとかの表現を入れていないだけですから、嘘だとは言えないのです。
ここはよく学ぶべきです。
ブログやメルマガのタイトルは、読み手の興味を引くためにとても大事です。
嘘ではないギリギリの線を攻めることが、タイトルには求めれられるのです。
『嘘』と『余計なことは書かない』の違いをよく認識しておくことが大事です。
書かなかったから嘘をついた、ということにはなりません。
これはPPCアフェリエイトの塾生募集でよく用いられます。
『3か月後には月50万の売り上げ達成が可能』
PPCですから広告代が必ずかかりますが、そこは決して言わない書かない。
50万円の売り上げで40万円以上広告費を使う人などざらにいます。
だが、売り上げですから嘘にはならない。
『1本のコピーを書いて48時間で5千万円の売り上げ達成』も一人ではなく、チーム数名で売り上げたのですが、それを書く人はほぼいません。
だが、これも嘘や詐欺にはなりません。
嘘にならない範囲で、自分に有利な数字を示すことはとても大事です。
この大切さを教えているのが『フランス人は服を10着しか持たない』なのです。
そして、『……持たない』と断言することも大事です。
これはオンラインに限ったことではありません。
オフラインの書店に並ぶ本のタイトルも、売れ行きに大きな影響を与えます。
このタイトルは『10着しか』の『しか』が、とても重要な役割を持ちます。
『フランス人は10着の服を持っている』では、ピンと来ず興味を惹けません。
または『フランス人は10着の服で生活する』では、自分の意志よりも経済的など外的要因が大きい印象を与えます。
やはり『フランス人は服を10着しか持たない』は、フランス人の毅然たる意志まで感じさせるから秀逸なのです。
この手法はまた、ネット上で頻繁に見かける、塾の勧誘や教材の売り込みと通じる手法でもあります。
『一日わずか200円のコーヒー一杯分で……』という売り方です。
この手法はとても古いですね。
誰がいつ頃から使っていたのかは定かではありませんが、昭和の高度成長期にはセールスマンの間で広く使われていましたし、雑誌の広告などでも見かけた手法です。
商品を買わせる場合は最小数で説明し、儲け話は最大数で説得する。
時代は変われど消費者心理は変わらないということです。
最後に『フランス人は服を10着しか持たない』の内容を簡単に説明しておきます。
パリにホームスティした経験をアメリカ・カルフォルニアの女性が書いています。
彼女はホームスティ先のマダム・シックの生活に驚くとともに、大いなる感銘を受けます。
マダム・シックは貴族の家系ですが偽名です。
日常の質素な生活の中に垣間見る上品さ。
日々の何気ない小さな楽しみの中に、大きな喜びを見出す素晴らしさ。
間食はしない、食事はリビングでは絶対に摂らない。
また、食事は家族団らんのとても大切な時間であり、みんなでゆっくりと楽しむ。
このようなマダム・シックの生活に彼女は大いなる影響を受けるのです。
『シック』には上品なという他に日本で言う、『わび、さび』のような意味も持つ言葉です。
基本的には何事にも縛られないで、自由闊達に生きることが大事。
だから、洋服も持ちすぎて、何を着るか迷うようなことがあっては本末転倒。
マダム・シックの生活スタイルはこんな風だったと思います。
著者のアメリカ女性は、自国の浪費文化との違いを認識し、驚きの中に新鮮な喜びを覚えるのでした。
アメリカ人は自由気ままが似合う。
フランス人は自由の中に哲学がある。
さて、そこまで高尚な本だったかな?