ムツゴロウや海苔(ノリ)の養殖で有名な有明海。
実は佐賀、福岡、長崎、熊本の4県に囲まれています。
最近は、熊本県によるアサリの産地偽装でも話題になっています。
アサリの産地偽装については最後に触れておきます。
面積は東京湾や伊勢湾とほぼ同じ1,700平方キロメートルもあるんですよ。
この大きさには、ちょっと驚きですね。
佐賀県が面する有明海はとても浅く最も深いところで、たったの20メートルぐらいの水深しかありません。
これが海苔の養殖に適しているんですね。
そして、昔々は中国大陸とつながっていたと言われる有明海の生い立ちは、一体どのようなものだったのか?
興味の尽きない多くのナゾに迫りました。
ガタリンピックとムツゴロウで有名な有明海は何故、泥んこ色なの?
海と言えば誰もが青い色をイメージするけど、有明海は泥の色をしています。
この泥は昔々、阿蘇山が噴火した時に地下から吹き出てきたものらしいよ。
有明海は潮の流れによって泥がつねに巻き上げられてるから、海は泥の色をしているのです。
この泥は水中のゴミとくっついて、底に沈みます。
そして、潮が引く干潮になると太陽の光にあたって、泥についたゴミは無害なものになると言うから、自然の力は偉大で神秘だ。
泥と太陽のおかげで有明海は無害でキレイな海になるのです。
だから、有明海では大人も子どもみんな、一見汚なそうな泥に身体を埋めても平気なんです。
多くの特徴がある有明海でも特筆すべきは、大きな潮の干満差ですね。
湾入口の早崎瀬戸で平均3~4m、湾の奥、大浦港・佐賀県太良町で平均5mあり、最大で約6mに達します。
干満差が大きくなる原因は、潮汐(ちょうせき)による海水の動きである潮汐振動と湾の形状に左右される海水の動き固有振動が似通っていて、共振が発生しているためと考えられていています。
潮汐(ちょうせき)とは、主として月と太陽の引力によって起きる海面の昇降現象です。
海岸などでみられる、1日に1~2回のゆっくりした海面の昇降を指します。
このような条件が揃う湾は世界的に見てもそれほど多くないと言います。
有明海はとても稀有で貴重な存在なのですよ。
海苔の養殖やムツゴロウなど多くの生物が生息する豊饒の海ですね。
日本最古の干拓が行われた海でもあります。
推古天皇15(605)年に大連(おおむらじ)秦河勝によって行われた九十九万代の干拓です。
現在の佐賀県です。
有明海の干潟ではこの干満差を利用し毎年5月、多くの人々がどろんこになって楽しむ『ガタリンピック』というユニークなイベントも行われています。
有明海の海苔が栄養満点で美味しい秘密と網についている貝殻は何?
東京湾とほぼ同じ広さの広大な干潟が続く有明海。
11月下旬、この有明海は辺り一面が海苔畑になります。
日本は全国各地で海苔の養殖が行われていますが、有明海の海苔は品質、生産量共に国内トップクラスを誇っています。
その秘密は、有明海独特の特長にあります。
潮の干満差が最大6mにも達するのは、海苔の養殖にどのような影響を及ぼすのか?
満潮時には海水に浸かっている海苔網が干潮時になると海面から顔を出して、海苔は太陽の光をいっぱいに浴びます。
海苔は植物ですから、太陽の光を浴びて光合成を行うことでたくさんの栄養を蓄えることができるのです。
そして、満潮になるとまた海水に浸かります。
流れが注ぐ筑後川など数多くの河川が、栄養分とミネラルを豊富に含んだ水と土砂を有明海に運んできてくれます。
そこでは、川から流れ込む真水と海水が混ざり合い、海苔が最も柔らかく、そして美味しく育つ塩分濃度になっているのです。
海苔の元になる『糸状体』は牡蠣殻の中にもぐり、春から夏にかけて海中で成長していきます。
糸状体(しじょうたい)とは、藻類の体の構成基本となる1列に並んだ細胞の連なりのことです。
海苔の養殖網に貝がついているのを見たことがありませんか?
実はあれ、糸状体を育てる牡蠣殻だったのです。
牡蠣殻の中で成長した糸状体が海苔の種となる核胞子を作ります。
この核胞子がたくさんついた牡蠣殻を落下傘と呼ばれる袋に入れ、海苔網に吊るします。
水温が23度くらいになると、核胞子は牡蠣殻から一斉に飛び出し、網一面に付着して海苔の芽となるのです。
核胞子の付き具合を確認しながら、重ねた海苔網を二十日ほどかけて1枚張りにしていきます。
このようにして、初秋の有明海には苔畑のような風景が広がるのです。
網に核胞子を付着させてから30日ほどたった11月下旬から、一番海苔の摘み採りが始まります。
1回の海苔摘みで1枚の網から約300~600枚分とれるから、かなりの量ですね。
また、1枚の網から7~8回海苔は摘み採れるのだと言う。
こうして摘み採られた海苔は横19cm、縦21cmの長方形に型取りされ、乾し海苔にします。
乾し海苔は専門の検査員によって厳しくチェックされ、規格・品質によって173種類に細かく分類されると言うから、驚きですね。
分類された海苔は市場で入札にかけられその後、火入れ工場へと運ばれます。
海苔がすべて同じ味わいを保つように火入れを行います。
およそ3時間かけて通常9~10%ある水分を5%未満にまで乾燥させます。
栄養素豊富な有明海の海苔はこうした手間、暇をかけて、美味しい商品となるのです。
鹿島ガタリンピックとは、どんな大会?誰でも参加できるの?
『ガタリンピック』とは毎年5月下旬〜6月初旬に開催されます。
有明海の干潟(ヒガタ)特有の条件を上手く利用した、とってもユニークなイベントです。
ヒガタの『ガタ』とオリンピックをもじって名付けられました。
日本一干満の差がある有明海の干潟で、泥んこになりながら独特な競技を競う地域のお祭りです。
もともとは地域おこしグループ『フォーラム鹿島』が計画したのがはじまりでした。
昭和60年、鹿島市七浦海浜スポーツ公園のこけら落としとして、第1回目が開催されました。
有明海のヒガタならではのドロンコ感覚が評判となり、今では留学生や海外からの招待選手も参加する佐賀県を代表するイベントのひとつに成長しました。
有明海沿岸特有の漁具『ガタスキー』を使ってのガタスキー競争、干潟上での自転車競走、ガタフライや泥に埋めた宝探しなど、奇想天外なガタリンピックならではの競技がいっぱいですよ。
ガタリンピック概要
見学は自由でが、競技への出場は事前の申し込みが必要です。
尚、競技参加については当日申し込めるものもあります。
場所:道の駅鹿島
駐車場:祐徳稲荷神社駐車場より無料シャトルバスを運行
(会場周辺には駐車場はありません)
〈アクセス〉
車:長崎自動車道武雄北方ICから車で40分
JR:JR長崎本線肥前七浦駅から徒歩5分
〈お問い合わせ〉
◎鹿島ガタリンピック実行委員会事務局
TEL 0954-60-5117 FAX 0954-60-5393 E-mail info@gatalympic.com
website:https://www.gatalympic.com/
有明海が出来たのは、約8千年前で中国大陸とつながっていた?
約2万年前の地球は厚い氷に覆われていてとても寒く、中国大陸と日本は陸でつながっていたって、知っていました?
でも、だんだん地球上の気温が高くなり氷が解けて水量が増し、陸地の一部が沈んでしまいました。
これによって、中国大陸と日本の間に海ができたのです。
その時に有明海にも海水が入ってきたんですね。
長い年月をかけて地球上には変化が続き、約8千年前に今の有明海ができたのです。
日本では有明海と八代海の一部にしかいないムツゴロウが実は中国の干潟にも生息しています。
これが、日本と中国はつながっていたとの証拠なのです。
有明海と中国大陸の関係をもう少し詳しく見てみましょう。
大昔、氷河時代と言われたころ有明海は黄海、渤海、東シナ海沿岸に続く広大な干潟の一部だったと考えられています。
このとき中国大陸の干潟に分布していたムツゴロウやシオマネキなどが、有明海にも分布するようになったのです。
その後、温暖化が進み地球を覆っていた氷が解けて海面が上昇し、約1万年前にこの干潟は分断されました。
有明海は筑後川など大規模河川からの流水が留保され、干潟と固有の生物も維持されたのです。
約30万年前から9万年前の間に阿蘇山の大噴火は4回ありました。
噴火によって堆積した厚い粘土層が、降雨により河川を経て流出します。
粘土層は大きな潮の干満差によって川に押し戻されたり、再び海に流されたりを繰り返し、河口付近に堆積して干潟が形成されたと考えられているのです。
アサリの産地偽装問題とは?
『熊本県産』表示のアサリに中国産や韓国産が大量に混入していた問題が波紋を広げています。
事の発端は農林水産省が行った2021年10月から12月末までに販売された、『熊本県産』アサリのサンプル調査でした。
DNA分析したところ31点のうち30点、約97%に中国や韓国の外国産が混入している可能性が高い、と判定されたことでした。
同年2月1日には金子原二郎農林水産大臣が閣議後の記者会見でこのように発言。
「食品の表示に対する消費者の信頼を揺るがしかねない」。
農林水産省のサンプル調査期間中の3カ月間、『熊本県産』アサリの推定販売量は2,485トンで、全国シェアの79.2%を占めていた。
2020年1年間の熊本県アサリは漁獲量が21トンだから、その流通量は約120倍にも達するから驚きだ。
これは、あまりに違いすぎる。
農林水産省のサンプル調査もどうやら「産地偽装をやっている」とのタレこみがあって、慌てて始めたようです。
これは、有明海の熊本産アサリに限らず、全国どこでも起こりうることで、食品に関わる産地偽装の根は深そうですね。